反応速度の平均と伸ばし方

自分の記録が速いのかどうか、何が数字を左右するのかを確かめます。

反射神経テストを一度やると、次に浮かぶ疑問はいつも同じです。「これって速いの、遅いの?」このページはその問いに答えるためのものです。平均は実際に何ミリ秒なのか、年齢でどれくらい変わるのか、プロや動物はどうなのか、そして記録を縮めるには何を変えればよいのかを、出典を示せる資料だけを使って整理しました。出典が見つからなかった数字は載せていません。

平均は何ミリ秒か

単純視覚反応時間、つまり「画面が変わったら押す」という課題の成人平均は、200ミリ秒台の前半から中盤です。

もっともよく引用される大規模測定はWoodsら(2015年、Frontiers in Human Neuroscience、「Factors influencing the latency of simple reaction time」)です。1,469人をパソコンの画面とマウスで測った実験1で、18〜24歳の平均は217.8msでした。

大事なのはその先です。研究チームは使った機材の遅延を自分たちで測り、モニター11.0ms+マウス6.8ms=約17.8msがすべての測定値に上乗せされていたと報告しました。これを差し引くと、いちばん若い層の「本当の」反応は約200ms、いちばん年長の層は約222msになります。

つまり、こう読めばよいのです。

  • ブラウザで200ms台が出たなら正常範囲。遅くはありません。
  • 300msを超えるなら、能力より先に測定環境(リフレッシュレート、タッチ操作、裏で動く処理、眠気)を疑うほうが妥当です。
  • 100ms未満は反応ではなく予測です。その回は外して測り直してください。

1回の値は数十ミリ秒揺れるので、単発の記録にはほとんど意味がありません。反射神経テストに戻って5回測り直し、平均で見てください。

年齢でどれくらい変わるのか

年齢別の表をそれらしく載せているサイトは多いのですが、出典のある値は意外と少ないです。はっきり言えることは二つあります。

1. 変化は思ったより緩やかです。 Woodsら(2015)で見つかった年齢の傾きは1年あたり約0.45〜0.55msでした。10年で5ms前後という計算で、同じ人が1回ごとに揺れる幅より小さい数字です。20代と50代を1回ずつ測って比べても、年齢差ではなくその日の調子しか見えません。

2.「単純反応」と「選択反応」は違う歳の取り方をします。 Der & Deary(2006年、Psychology and Aging)は、英国Health and Lifestyle Surveyの成人7,130人のデータを再分析しました。結果はこうです。

  • 単純反応(合図ひとつにボタンひとつ)は、50歳前後までほとんど遅くなりませんでした。
  • 4択反応(複数の合図から正しいボタンを選ぶ)は、成人期を通じて遅くなり続けました。
  • 男女差も統計的に有意で、とくに選択反応のばらつきで目立ちました。

このページのテストは単純反応のほうです。だから40代が20代と変わらない数字を出すことは珍しくありません。年齢が足を引っ張るのは「選ぶ作業」であって「押す作業」ではないのです。

もうひとつ。Woodsら(2015)は、刺激に気づくまでの時間そのものは年齢で変わらず、遅れは手を動かしてクリックを作り出す側に現れたと報告しています。目が遅く見るのではなく、手が遅く落ちる、に近いということです。

スマホだとなぜ遅く出るのか

いちばん多い質問であり、いちばん誤解の多いところです。スマホで遅く出るのは、たいていあなたではなく機材のせいです。

ブラウザで測る値は、次の4つの合計です。

  1. 画面が実際に緑を表示するまでの時間
  2. 目と脳がそれに気づくまでの時間
  3. 指が動いて触れるまでの時間
  4. 端末がその入力を認識してブラウザに渡すまでの時間

あなたの「実力」は2と3だけで、1と4は機材の取り分です。タッチスクリーンは指の接触を処理して渡すのにマウスのクリックより時間がかかり、モニターのリフレッシュレートもそのまま1に足されます。60Hzなら約16.7msに1回、144Hzなら約6.9msに1回しか画面は描き直されません。

Woodsら(2015)が実測した17.8msは研究室の機材での話です。一般的なノートパソコンやスマホでは、これより大きくなるのが普通です。ですから、パソコンの記録とスマホの記録を並べて「鈍くなった」と結論づけてはいけません。 比較は必ず同じ端末・同じブラウザ・同じモニターの中だけで行ってください。

プロはどれくらい速いのか

ネット上には、特定のプロゲーマーやF1ドライバーの反応速度が何ミリ秒だという話がたくさん流れています。しかし標準化された方法で測定して公開された一次資料を見つけられなかったため、このページにはその種の数字を書きません。 使う機材と課題が違えば、値そのものが意味を失うからです。

確認できる基準はこの二つです。

陸上の0.100秒という線。 World Athleticsの技術規則16.7条・16.8条は、公認のスタート・インフォメーション・システムが反応時間0.100秒未満を検知したら不正スタートの信号を鳴らすよう定めています。音の合図に対してさえ、それより速く動いたのなら反応ではなく予測とみなす、という考え方で、これが現在のスポーツ規則が認める人間の下限です。画面を見て押す課題は音より条件が不利なので、実際にはこれよりずっと遅くなります。

F1スタートの仕組み。 F1では赤いライトが5つ1秒間隔で点灯し、そのあと長さの決まっていない待ち時間をおいて一斉に消えることでレースが始まります。待ち時間が毎回違わないと、ドライバーがリズムを覚えてフライングできてしまうからです。このページの緑が毎回違うタイミングで出るのも、まったく同じ理由です。間隔が一定だと、測っているのは反応速度ではなくリズム感になってしまいます。

プロが実際に勝っているのは、おそらく単純反応そのものよりも「次に何が起きるかをあらかじめ絞り込む力」でしょう。先を読めば反応すべき選択肢が減りますが、それは単純反応テストには映らない能力です。

動物と比較すると

「反応速度 動物 比較」は人気のある話題ですが、引用される数字の多くは出典がありません。きちんと測られて論文に載っているのは、主に昆虫のほうです。

Sourakov(2011年、Florida Entomologist 94(2), 367–369)は、アシナガバエ科の Condylostylus がカメラのフラッシュに5ms未満、おそらく2msで飛び立ったと報告しました。同じ論文が比較対象として挙げた既存の測定値は次のとおりです。

対象報告された反応時間出典
Condylostylus(アシナガバエ)5ms未満(2msの可能性)Sourakov 2011
セセリチョウ17ms未満Sourakov 2009
イエバエ30〜50msHolmqvist 1994
ゴキブリ50ms未満Camhi & Tom 1978
人間(単純視覚反応)約200〜220msWoodsら 2015

人間の40倍から100倍も速いことになります。ただし昆虫のこうした反応は、人間の「見て・判断して・押す」とは別種で、神経回路がごく短くつながった逃避反射です。比較は楽しみとして見つつ、同じ能力を測ったわけではない点は覚えておいてください。猫・犬・チーターなどよく引用される動物は、出典のはっきりした測定値を見つけられなかったので入れていません。

反応速度を縮める方法

効果の大きい順です。最初の4つは今日すぐに数十ミリ秒を削ってくれます。

  1. 指をあらかじめ置いておく。 マウスボタンの上、またはスマホなら画面の1cm上。手を持ち上げて下ろす動作は、そのまま記録に足されます。
  2. 画面の中央を見る。 周辺視野で色の変化を捉えると、中心視で見るより気づくのが遅れます。
  3. 予測しない。 先に押そうとして100msを切ってしまったり、逆に空振りして慌ててずっと遅くなったりする人が多いです。合図を待つほうが平均は速くなります。
  4. 環境を整える。 裏のタブを閉じる、省電力モードを切る、有線や低遅延のマウスを使う、リフレッシュレートの高いモニターにする。Woodsら(2015)の17.8msが示すとおり、これは実際に記録に入る数字です。
  5. コンディション。 眠いとき、飲んだあとは確実に遅くなります。同じ時間帯に、休んだ状態で測ってこそ比較になります。
  6. 繰り返し測る。 日をまたいで5回セットを何度も測り、セット平均どうしを比べてください。単発では向上は見えません。

トレーニングで「神経の伝達が速くなるか」は断言できません。テストの点数がよくなるのは確かですが、それが課題に慣れた結果なのか能力そのものが変わったのかを切り分けるのは簡単ではありません。だからこのページは「数日で何ms速くなる」といった約束はしません。

それでも条件を整えるだけで数字はかなり変わります。整ったらもう一度測ってみてください

よくある誤解

「スマホで遅くなったから鈍ったのだ」 違います。上の機材の話をもう一度読んでください。端末を変えて測った値は比較対象になりません。

「1回測った値が自分の実力だ」 違います。同じ人の中でも試行ごとに数十ミリ秒揺れます。最低5回の平均で見てください。

「反応が遅いのはどこか悪いからだ」 このテストでは何も診断できません。反応速度は年齢、睡眠、カフェイン、機材、集中の度合い、測る時刻で簡単に数十ミリ秒動きます。健康が心配なら、Webのテストではなく医療機関で確認してください。

「ランク表は公認基準だ」 違います。当サイトの区切りは、blockblast.coが結果を読みやすく見せるために独自に決めたもので、他サイトとは数字が違うことがあります。

「指が速い=反応が速い」 別の能力です。反応は合図ひとつに一度動く速さ、連打は同じ動作をどれだけ細かく繰り返せるかです。気になるなら連打の速さを測る連打ゲーム狙いの正確さを見るエイム練習を同じ手で両方やってみてください。得意なほうが分かれる人は珍しくありません。

記憶力テストのような別種の脳トレと組み合わせると、自分の強みがどこにあるかが見えやすくなります。最後にもう一度書きますが、このページの内容はすべて楽しみと自己測定のためのもので、医学的な判断材料ではありません。

準備ができたら、反射神経テストに戻って5回を測り直してみてください

参考文献

  • Woods, D. L., Wyma, J. M., Yund, E. W., Herron, T. J., & Reed, B. (2015). Factors influencing the latency of simple reaction time. Frontiers in Human Neuroscience, 9, 131.
  • Der, G., & Deary, I. J. (2006). Age and sex differences in reaction time in adulthood: Results from the United Kingdom Health and Lifestyle Survey. Psychology and Aging, 21(1), 62–73.
  • Sourakov, A. (2011). Faster than a flash: The fastest visual startle reflex response is found in a long-legged fly, Condylostylus sp. (Dolichopodidae). Florida Entomologist, 94(2), 367–369.
  • World Athletics, Technical Rules (C2.1), Rules 16.7–16.8 (False Start).

反応速度の平均のよくある質問

「平均は200ミリ秒台」という数字の出どころはどこですか?

Woodsら(2015年、Frontiers in Human Neuroscience)の研究です。1,469人をマウスとモニターで測ったところ、18〜24歳の平均は217.8msでした。研究チームが自分たちで測った機材の遅延(モニター11.0ms+マウス6.8ms=17.8ms)を引くと、いちばん若い層は約200msになります。つまりブラウザで200ms台が出たなら、遅いどころかごく普通の結果です。

年齢とともにどれくらい遅くなりますか?

Woodsら(2015)では、機材の遅延を補正した値がいちばん若い層で約200ms、いちばん年長の層で約222msとなり、1年あたり約0.45〜0.55msずつ遅くなる傾向でした。成人7,130人を分析したDer & Deary(2006年、Psychology and Aging)では、単純反応は50歳前後までほとんど遅くならず、選択肢のある反応(4択)は成人期を通じて遅くなり続けました。

遅くなるのは目が悪くなるからですか?

Woodsら(2015)は、刺激に気づくまでの時間そのものは年齢で変わらず、遅れは手を動かして押す側に現れたと報告しています。「見るのが遅い」というより「押すのが遅い」に近い、ということです。

スマホで測ると遅く出ます。鈍くなったのでしょうか?

その可能性は低いです。タッチスクリーンは指の接触を認識してブラウザに伝えるまでに、マウスのクリックより時間がかかります。その差がそのまま記録に上乗せされます。同じ人が同じ日に測っても、パソコンとスマホでは値が違って当然なので、比較は必ず同じ端末・同じブラウザの中で行ってください。

プロゲーマーやF1ドライバーの反応速度は何ミリ秒ですか?

よく出回る数字はありますが、特定の選手の反応速度を標準化された方法で測定して公開した資料は見つけられませんでした。そのためここには書きません。確認できる基準は陸上競技のほうにあります。World Athleticsの技術規則16.7条・16.8条は、0.100秒より速い出発反応を不正スタートとして扱います。それより速いのは号砲に反応したのではなく予測したとみなす、という考え方です。

動物と比較するとどうですか?

昆虫に測定値があります。Sourakov(2011年、Florida Entomologist)は、アシナガバエ科のCondylostylusが閃光に5ms未満、おそらく2msで反応したと報告し、イエバエ30〜50ms、ゴキブリ50ms未満、セセリチョウ17ms未満といった既存の測定値と比較しています。人間が200ms台であることを考えると、桁が違います。

反射神経は訓練で速くなりますか?

テストの数値は確実に良くなります。ただしそれが神経が速くなったからなのか、この課題に慣れて構えがうまくなったからなのかは切り分けが困難です。はっきり変えられるのは条件のほうです。指をあらかじめボタンの上に置く、画面の中央を見る、十分に寝てから測る、遅延の少ない機材を使う — これだけでも数値は目に見えて変わります。

何回測るのがよいですか?

最低5回です。1回の値は数十ミリ秒揺れるので、単発では何もわかりません。このページは5回測って平均を出します。もっときちんと比べたいなら、日をまたいで同じ時間帯に何セットか測り、そのセット平均どうしを比べてください。

100ミリ秒を切りました。記録でしょうか?

いいえ。合図が見える前に押したか、予測して押した場合です。陸上で0.100秒未満を不正スタートとするのと同じ理由で、その値は反応ではなく当てずっぽうです。平均からは外しましょう。